両側を埒(らち:柵の事)で仕切られた直線を走行しながら、鏑矢(かぶらや:先端に卵型で中が空洞の武具を付けたもの)で、進行方向左手にある3つの的を射る騎射。
進行方向の左側は男埒(おらち)と呼び、反対側は女埒(めらち)と呼びます。
神事(しんじ)やイベント等で、伝統的なスタイル(作法、礼法が重んじられる)が披露されています。
笠懸(かさがけ)、犬追物(いぬおうもの)と並び、騎射三物(きしゃみつもの)と呼ばれています。
※競技として行われているものもあり、こちらはスポーツ流鏑馬等と呼ばれています。
伝統の流鏑馬
伝統的なスタイルには、小笠原流、武田流、遠野南部(とおのなんぶ)等の流派があり、その中でもさらに分かれていたり、流派ごとに作法や服装等が異なります。
※作法、礼法を重んじる伝統スタイルなので、スポーツとして楽しみたい方には向きません。
神事で奉納されたり、イベントで披露されたりする為、場所ごとに馬場(ばば:走るコース)の長さ(200~250m前後が多い)や、的までの距離や間隔が変わってきます。
的も木材で作られたもの、紙で作られたもの、土器等と種類があります。
小笠原流流鏑馬
弓馬術礼法小笠原教場(きゅうばじゅつれいほうおがさわらきょうじょう)が奉納します。略称(小笠原流)。
矢を番える(つがえる)動作の間に、「陰陽(いんよー)」という声を発します。
スタート地点を馬場元(ばばもと)と呼び、一の的(いちのまと)、二の的(にのまと)、三の的、ゴール地点を馬場末(ばばすえ)と呼びます。
的は一辺約55cm(一尺八寸)の杉板を使います。
小笠原流流鏑馬の服装
▼鎌倉時代の狩装束
綾藺笠(あやいがさ:いぐさを編んで裏に布を張った笠)、立烏帽子(たてえぼし:高く立てたままで折らない)、鎧直垂(よろいひたたれ:鎧の下に着る着物)、行縢(むかばき:鹿の夏毛で作られる)、射籠手(いごて:弦が袖に当たるのを防ぐ)、太刀、前差し(まえざし)、弦巻(つるまき)、箙(えびら:矢を入れる容器)、物射沓(ものいぐつ:革製のくつ)
雁股矢(かりまたや:矢の先が股を開いたように分かれた形状のもの)を射ます。
▼江戸時代の軽装束
騎射笠(きしゃがさ:竹を編んで漆塗りにしたもの)、筒袖(つつそで:和服の袖の形)の紋付(もんつき:家紋の入った着物)、小袴(こばかま:すその短い狩り用の袴)
鏑矢(かぶらや:先端に卵型で中が空洞の武具を付けたもの)を射ます。
武田流流鏑馬
公益社団法人大日本弓馬会・武田流(こうえきしゃだんほうじんだいにほんきゅうばかい たけだりゅう)が奉納します。略称(武田流)。
スタート地点を馬場本(ばばもと)と呼び、一の的、二の的、三の的、ゴール地点を馬場末と呼びます。
射手は2組に分かれ、的の種類を変え2回ずつ走り、合計6回狙い、成績上位者は競射(きょうしゃ)へ進みます。
的は一辺約55cm(一尺八寸)の檜の板的、檜を編んで白紙を貼り、五色の丸的が描かれた式の的の2種類。
成績優秀者で行われる競射では、三寸(直径約9cm)の素焼きの皿2枚を合わせ、中に五色の切り紙が入った土器三寸の的を狙います。
武田流流鏑馬の服装
鬼面綾檜笠(きめんあやひがさ:いぐさを編んで裏に布を張った笠で、神事の際は頭頂部に鬼の面をつける)、競射の際は鬼面を外します。
鎧直垂、行縢、射籠手、太刀、前差し、弦巻、物射沓
鏑矢(かぶらや:先端に卵型で中が空洞の武具を付けたもの)を射ます。
流鏑馬が日本独自の理由
1、日本の在来馬(ざいらいば)・和種に乗る事
木曽馬(きそうま:長野県天然記念物)、北海道和種「通称は道産子(どさんこ)」等。
2、狩装束(かりしょうぞく)を着る事
3、和式馬装をする事
和鞍(わぐら)、和鐙(わあぶみ)、和ハミ・轡(くつわ:ハミの事、三懸(さんがい)「面懸(おもがい:轡を固定する為に頭にかける緒)、胸懸(むながい:鞍を固定する為につける緒)、鞦(しりがい:鞍から尻にかける緒)」等。
4、立ち透かし(たちすかし)で騎乗する事
腰を鞍に付けずに浮かし、脚で馬を挟まずに、舌のような形をした和鐙に立って乗り、膝と足首で揺れを吸収し、上半身を固定する技術。