両側を埒(らち:柵の事)で仕切られた間を走行しながら、鏑矢(かぶらや:先端に卵型で中が空洞の武具を付けたもの)で、馬上から的を狙う騎射。
進行方向の左側は男埒(おらち)と呼び、反対側は女埒(めらち)と呼びます。
流鏑馬(やぶさめ)、犬追物(いぬおうもの)と並び、騎射三物(きしゃみつもの)と呼ばれています。
流鏑馬よりも実戦的(詳しくは後述)で高い技術を要求される為、現在では京都市・上賀茂神社の笠懸神事(かみがもじんじゃのかさがけしんじ)、神奈川県三浦市・道寸祭り(どうすんまつり)、群馬県みどり市・ひまわりの花畑まつり等、わずかしか行われていません。
武田流笠懸と服装
スタート地点(馬場本:ばばもと)から、ゴール地点(馬場末:ばばすえ)までを、往復しながら4~5つの的を狙います。
馬上から的を弓で射る射手(いて)は2組に分かれて行い、成績上位者は競射(きょうしゃ)へ進みます。
※矢代振之式(やしろぶりのしき)、出場する各自の矢をくじにして、順番を決める儀式。全員から預かった矢を後ろ手にし、1本ずつ抜き出して決めます。
遠笠懸(とおかさがけ)
往路は遠笠懸と呼ばれ、竹矢来(たけやらい:竹の柵)で囲われた、進行方向左手に水平に設置された一辺約40cmの板的を使います。
一の的(いちのまと)、二の的(にのまと)、三の的(さんのまと:無い場合もある)を狙い、ゴール地点まで駆け抜け、同組の全員が終わり折り返しスタートまで、一時待機します。
小笠懸(こかさがけ)
復路は小笠懸と呼ばれ、2つの的(一辺約12~15cmの板)を射ますが、的の設置方向や位置が変わります。
まずは、馬手筋違(めてすがい)と呼ばれる射法で、進行方向「右斜め下」にある的を狙いますが、弓は左手で持っている為、馬の首を越えて反対側に構えを変え、体を捻って射る必要があります。
続いて、弓手筋違(ゆんですがい)と呼ばれる射法で、進行方向「左斜め下」にある的を狙うので、馬の首を越えて反対側に構えを変える必要があります。
競射
成績優秀者で行われる競射では、往路だけ三寸(直径約9cm)の素焼きの皿2枚を合わせ、中に五色の切り紙が入った土器三寸の的に変わります。復路は変更がありません。
武田流笠懸具足(かさがけぐそく:服装)
後三年型侍烏帽子(ごさんねんがたさむらいえぼし)、鎧直垂(よろいひたたれ:鎧の下に着る着物)、行縢(むかばき:鹿の夏毛で作られる)、射籠手(いごて:弦が袖に当たるのを防ぐ)、太刀、前差し(まえざし)、弦巻(つるまき)、物射沓(ものいぐつ:革製のくつ)
小笠原流笠懸と服装
進行方向左手の下方向(地面に近い)に設置された、直径約55cmの丸い板になめし革で作られ、木枠に紐で3点止めして吊るした的を、走り抜けながら1つ狙います(遠笠懸)。
大蟇目(おおひきめ)と呼ばれる、先端が大きい鏑矢を使います。
小笠原流笠懸具足
立烏帽子(たてえぼし:高く立てたままで折らない)、鎧直垂、行縢、射籠手、太刀、前差し(まえざし)、弦巻(つるまき)、物射沓(ものいぐつ:革製のくつ)